ハウスメーカーの地震対策メリット・デメリットをおさえよう!
免震のメリット・デメリット
免震装置(出典:ブリヂストンHP)
免震メリット
免震は、床下に装置を付けて、地震の揺れを直接、伝わらないようにする仕組み。
震度7の揺れも、震度4程度におさえるので、大きな地震が来ても安心と言えるでしょう。
突然の地震で、家具が倒れて大けがをするケースも多いですが、ほとんどの場合、心配はありません。
外装、内壁クロスの損傷、構造のダメージの不安も、免震装置を付けていれば、ノーダメージであることが多いです。
免震デメリット
免震装置の取り付けは、大きなコスト(数百万~)がかかることが多いです。
また、住宅の揺れ幅をみこした施工が必要なので、比較的広い敷地が求められます。
少なくとも、隣地境界線から1m程度下がって住宅が建築できる余裕が欲しいところです。
免震装置を設置するためには、地盤が強固であることも必要条件です。
緩い地盤だと効果が発揮できないので、地盤調査をしてもらい、必要なら地盤改良費もかかってくることに注意したいものです。
そして、免震装置の耐用年数は、永久というものではなく、定期的なメンテナンス費も考慮しておく必要があるでしょう。
免震に対応しているハウスメーカー
積水ハウス(免震住宅)
・中~大地震の揺れを1/5~1/15に低減します。
・最大460mm(±230mm)、360度全方向に動くことにより、地震のエネルギーを吸収します。
ダイワハウス(新免震住宅)
・大地震の揺れを5分の1~8分の1に軽減。
・強風時には「風揺れ固定装置」の働きでふらつきを抑止します。
・従来の免震システムに比べ約30%のコストダウンを実現。
一条工務店(一条ハイブリッド免震構法)
・建物を全方向(360°)に滑らせて地震エネルギーを吸収。
・約300回の免震装置の実験で、性能を実証している。
・免震装置はノーメンテナンスで60年間の耐用年数がある。
三井ホーム(M-400)
・地震力を5分の1から3分の1に低減。
・上部構造の重量に左右されず免震効果を発揮。
・固有周期がなく、さまざまな地震に対応。
制震のメリット・デメリット
制震装置(出典:ダイワハウスHP)
制震メリット
地震の揺れを、構造に取り付けられた制震装置で和らげる仕組み。
地震エネルギーを構造だけで耐えるのではなく、装置に組み込まれたダンパーで熱エネルギーに変えて逃がすのです。
つまり、構造の耐力と制震装置の仕組みで、地震エネルギーを最小限におさえて、住宅の損傷を防ぎます。
比較的、簡単に取り付けることが可能というのがメリットで、大手ハウスメーカーでは標準装備しているところも少なくないです。
設置費用は、40万円ほど。
制震デメリット
免震とは違い、装置が地震エネルギーを吸収する仕組みなので、大きな揺れがくると軽微なダメージを受けることも。
非常に大きな地震でなければ構造にダメージを残すことは、無いと想定できますが、中規模の地震でも、住宅内装の亀裂や家具が倒れたりするリスクはあります。
制振装置で揺れを軽減することについて、1階ではあまり効果が発揮されません。
1階よりも揺れの大きい2階で、効果が発揮されることを覚えておくと良いでしょう。
制震に対応しているハウスメーカー
積水ハウス(SHEQAS / シーカス)
・建物の変形量を約1/2に抑制。
・繰り返しの地震に強く耐久性に優れている。
・粘弾性制震システムでは、はじめて「構造方法等の認定」と、「特別評価方法認定」の国土交通大臣認定を取得。
ダイワハウス(DEOQT D/ディークトD)
・建物の変形量を20%~50%低減。
・装置に使用のエネルギー吸収部分は粘弾性体のため劣化はほとんどない。
・実大震動実験でも高い性能を実証。
トヨタホーム(T4システム)
・建物の変形を20%から70%に低減。
・自動車に用いられるショックアブソーバーを発想の原点とする。
・制震装置の100年相当の耐久性を実現(保証は最長60年)。
へーベルハウス(ハイパワードクロス)
※2階建て対応
・地震による揺れを約1/2まで低減。
・標準装備で、構造のブレース部分がすべて制震装置になる。
・斜材と横材の組み合わせによって座屈を抑える。
ミサワホーム(MGEO / エムジオ)
・地震エネルギーを最大約50%軽減(2カ所の設置)。
・巨大地震(阪神・淡路大震災)の2倍レベル13回の地震実験でも構造体の損傷ゼロ、内装にも目立つ被害なし。
・劣化促進試験では、約100年相当の高い耐久性を実証。
三井ホーム(VAX / バックス)
・地上に対する建物の揺れを2階建ての2階床で、最大80%程度低減。
・繰り返しの大地震に対しても、性能を長期に維持し効果が持続。
・間口が狭く奥行きのある建物でも効果的に抑制。
サンヨーホームズ(ダイナミックダンパー)
※正式名称はサンダブルエックス ダイナミックダンパー
・地震の揺れを最大約50%軽減(1階に2ヵ所設置)。
・地震が強いほど大きな効果を発揮。
・国から「型式適合認定(工業化認定)」を認定取得。
・「制震構造」を戸建住宅全商品に標準搭載。
住友林業(地震エネルギー吸収パネル)
・地震エネルギーによる建物の変形を最大約70%抑える。
・繰り返しの中小地震に対して強さを維持。
・エネルギー吸収の役割を果たす高剛性・高減衰ゴムは、超高層ビルにも使用されている。
耐震のメリット・デメリット
耐震メリット
強固な構造そのもので、地震エネルギーを吸収する仕組み。
免震、制震がついている住宅物件に比べて、はるかにコストが割安になります。
また、免震装置を設置するときのように、隣地境界線とのある程度のスペースを気にすることなく、建築できるところもメリットでしょう。
ライフサイクルに合わせた将来の住宅カスタマイズも、支障となる装置が無い分、容易にできることも考えられます。
耐震デメリット
地震エネルギーを住宅構造のみで耐える手法のため、地面からくるエネルギーを直接、住宅構造に伝えてしまいます。
余程の大きな地震でなければ、倒壊の危険は少ないですが、構造を揺らせてエネルギーを吸収する耐震の仕組み上、地震の度合いによっては、外壁、内装クロスなどの破損、家具の倒壊の可能性は大きいでしょう。
ちなみに、耐震能力については、構造自体が地震エネルギーに耐える力を発揮するというものなので、欠陥住宅でなければ、すべての住宅が備えていて当然のものです。
大手ハウスメーカーなら耐震等級3の最高等級を持っているので、構造の強度の差は多少ありますが、特に比較の余地はないと言えるでしょう。
まとめ
ハウスメーカーの地震対策として免震、制震、耐震の観点からまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。
それぞれの地震対策には、敷地条件、構造条件、間取り条件、コストの面などを考慮して、設置が可能かどうかをよく考える必要があります。
免震、制震対策がされていない大手ハウスメーカーもありますが、それぞれの構造や考え方によって、必ずしも必要とはされていません。
コストパフォーマンス性、価格面から無駄な装置と位置づけているメーカーもあるくらいです。
各ハウスメーカーの価値観や理念を聞いて、ご自身で納得したうえで、免震、制震装置の採用を検討をしてみる必要があるでしょう。